Day 99 判決が近づくと、突如として信心深くなる人たち
ロン毛が突然、「日没の太陽に手を合わせて祈った方がいい」と言い出した。
留置場から日没は目視できないが、曇りガラス越しに、日没らしき状態はわかる。
「何に祈るのですか?」
「神サマに罪を許してもらう。」
私は無神論者ではないが、被害者に許してもらう方策を考える方が有益ではないかと思う。
迷惑を被ったのは被害者だし、判決は裁判官が下すのだ。
そもそも、彼はさほど信心深い人物ではない。
この異変は、数日後に迫った判決以外理由が見あたらなかった。
どんな悪人でも裁きが近づくと、神に祈りたくなるものなのだろう。
お祈りを終えると彼は、なにごともなかったかのように、筋トレを始めた。
体力勝負の少年刑務所では、小柄なため運動時間に大変苦労したそうで、
その経験からか、留置場では朝から筋トレに励んでいた。
「懲役は決められた時間以外に、筋トレやると、オヤジに怒られる。」
「拘置所はどうです?」
「拘置所もダメ。」
だったら今、ここで筋トレやらんでもいいじゃないかっ
「オモテにいる時も、カラダ鍛えてたんですか?」
「いや、やらないよ。やるわけないだろ。」
この人の人生は、
思いつきと場当たり的な行動によってのみ形成されているのかもしれない。
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彼は求刑5年を打たれた。
今までの求刑が、2から3年であったことを考えると・・・重い。
彼の担当検事、大谷検事は、最後の調べで、
「君も今回は長く入ることになるんだから・・・」
宣告ともいうべき予告をしていたらしい。
どちらかというと量刑の軽い、窃盗も
何度も繰り返すと、常習累犯窃盗という罪名になり、
重くなるという。
最後の検事調書は、私は反省しており、もう二度としません、の言葉で〆られ、
「君とはまたどこかで会うことがあるかもしれないが、
今回のような立場で再会することはやめような。」
と大谷検事は言ったそうだ。
ロン毛はあたまを抱えていた。
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予定通りなら、今日は大男の判決である。
求刑6年が、どこまでまかるか・・・
川越会はなんてことも言ってたな・・・(笑)
そう言えば、あの男もある日突然、祈りをささげるようになった。
やはり、裁きが近づくと、誰でも祈りたくなるのだ。