Day 59 参考人聴取 車両提供者
昨日、ヤスが来たぞ・・・
取調べの休憩で、唐突にブチョーが言った。ヤスは幼馴染みの配管工で、酒好きバクチ好き(オンナはそうでもなかった、だからバツイチになったという意見も地元では根強い)のため、年中小遣い銭に困っていたことから、他人名義のクルマで商品発送をしたい裏モノ屋に、業務用トヨタハイエースを度々貸していた。何事もなければ黙っているつもりだったのだが、その何事が起こった。
妙な画像が出てきたのだ。
アレか・・・
その画像は、JR某駅前某コンビニ防犯カメラの映像からキャプチャーしたモノで、店頭に停車中の車両側面前部を捉えた画像だった。かろうじてナンバープレート映り込みは避けられたものの、助手席ドアに文字らしきものは視認できた。判別は・・・難しいと思う。当時のコンビニ防犯カメラの性能がその程度だったのだろうし、警察による画像引き伸ばしもまた、その読取を一層困難なものにしていた。
しかしブチョーは、
この写真1枚からだけでも、車種年式は特定できる。技官のトコ持っていけば、文字もわかるんだぞ。
だから、こんなクルマは知らんだのと、オレらの手を煩わせるのはやめてくれ、ということらしい。
あの日のことはよく憶えている。戻るまでここで待っててくれよと、さらに手前の角で降りる際、絶対動かすなよと念を押したが、降車直後に降り出した小雨が災いし、シゴトを終えて外に出ると、目の前にヤスの笑顔とハイエースがあった。
ブチョー
「誰のクルマだ?」
( ̄ー+ ̄)
「身柄拘束になりますかね?そいつ。」
ブチョー
「共犯なら、なるんじゃねえか。」
( ̄ー+ ̄)
「運転だけで共犯なら、都内のタクシーは半減するじゃないですか?」
ブチョー
「タクシー運転手は送って終わりだろ?ハメ撮りまではしねぇよ。」
( ̄ー+ ̄)
「そいつもやってないですよ。」
ブチョー
「・・・Rじゃないのか?」
なるほど、そういうことか。
以降、ヤスの名前は取調室で頻繁に登場(要するに結構な回数だったということだ)することになり、
本名を通り越し、ニックネームのヤスだけで通るようになった頃、
「心配すんな、逮捕しねぇから」
でも、裏付けのため近々呼ぶぞ、ということになってしまった。
こういった被疑者友人知人の参考人調べは珍しいことではないそうで、
通常は終了後に面会となるらしい。
「オマエは出来ないけどな。」
接見禁止はまだ解除されていなかった。
鬱陶しいこと、この上ない。