Day 55 ショーファーを襲ったオトコ
こんな私にも羽振りの良い友人の1人くらいはいる。
彼は最近、1500万円を越える高額なレクサスを新車で購入した。
彼は喫煙者だったが、非標準装備の灰皿を仕方なくオプション(それもかなりの高額だぞ)で付けたのに、
後席にしか装備されないことに腹を立て、買ったばかりのレクサスを禁煙車にすると決めた。
どうも、あのテの車はオーナーカーを前提として作られていないような気がする。
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先日入場してきた95番は、郊外某ショッピングモール駐車場において、
車から降りた男性をモンキーレンチを用いて襲い、
金銭を奪って逃走した。
「ベンツに乗ってるから、金持ちだと思ったんですよね。」
被害者の懐をさぐると、使い古された感のある立派な長財布があった。
「これはたくさん入っているだろう、と思いましたよ。」
だが、たくさん入っていたのは領収書で、肝心の現金は、千円札が3枚と硬貨が数枚しかなかった。
「ガッカリしましたね。」
被害者は身なりの良い初老の男性だったそうだが、ベンツのオーナーではなかった。
そのメルセデスは、ショーファードリブンカーだったのだ。
「あの立派な財布も、後ろの社長さんから持たされたモノだったんでしょうねぇ。」
私は試しに、もしクルマがマセラティとかアストンマーチンでも襲ったか尋ねてみた。
「マセラティ? なにソレ?」
バブルの頃、秋元康はエッセイで、アウトビアンキ等レアな外車に走る当時の洒落者たちを、
寝技を使うんじゃない、と斬り捨てた。
「昔っから、儲かったらベンツと決まっているのだ。」
狂った金持ちが溢れるあの時代にあってさえ、スリーポインテッド・スターは富の象徴であったようだ。
明石老人は、「貧しい人たちの嫉妬を恐れないうちは、金持ちとして2流だよ。」と言った。
私が運転手付きの車を乗りまわす身分になることはおそらくないと思うが、
将来、万が一羽振りが良くなったとしても、
私のように了見が狭い人間は、大衆車以外考えない方が無難だ。(寝技にするなら安全だと思う)
頭部を負傷した運転手さんは今もまだ入院中で、被害者家族は厳重処罰の意思表示を崩していない。
あたりまえだ。