Day 106 チャリ男入場
彼はロン毛移送直前、入れ替わりのように7室に入ってきた。
彼、石田君(仮名)は、相手の目をしっかり見て話す若い男で、
JR川越駅前で街頭演説中の市議会議員の演説がうるさかったことから、
注意しようとアクションを起こし、
誤ってスピーカーを壊してしまったらしい。
なるほど、どことなく彼の風貌には、そういう真っ直ぐなところを感じさせるところがある。
自転車(ママチャリじゃなくて、ロードレーサー)が趣味と言うだけあって、
よく陽に焼けた筋肉質の身体をしていた。
威力業務妨害と器物損壊の現行犯で逮捕されたそうだが、
私は正直なところ、別にそのくらい、修理代弁償でイイんじゃないかと思った。
「市議がご立腹なので、しばらく泊まっていけよ、って言われました。」
性格の悪い市議だ。なんとなく所属する政党が見えてきたので、
聞いてみると、的中した。
明石老人は、
「どうせ、おしおき10日だろう、悪くても罰金パイでサヨナラだ。」
と言ったが、
10日どころか、留置場に入れる必要がないと思う。
壊したのは悪いことだが、事を大きくして、
出勤前の若い納税者を留置場にブチ込むのもいかがなものかと思う。
市議会議員として、決して褒められたことではない。
「スピーカーを壊したというのは・・・故意ですか?」
「壊したというより、壊れた、んです。」
「壊れた・・・?」
さっき確かに、壊してしまったと・・・
よくよく話を聞くと、
スピーカーを持ち上げて移動させようとしたとき、
落としたという、
「・・・それで、壊れた、んです。」
ふーん・・・
逮捕された直後の被疑者は、大抵凹んでいる。
まともな人ほど、凹んでいる。(例外もいる)
彼はまともな人だったので、
見ているのもかわいそうなくらい、凹んでいた。
出勤途中に引っぱっていかれた彼のもとへ、
午後、奥さんが面会に来た。
着替えの他、小六法を差し入れてくれたという。
「泣くんなら、そんなことやるな、って、笑いながら、言われました。」(笑)
「しっかりものの奥さんですね。・・・きっと、キレイな方でしょう?」
「ウチのは、長州小力に似ています。」(笑)
頼もしいじゃないか、外見も内面も。
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