Day 102 児童ポルノDVDは何枚所持しているかが、実に重要だ。
人は状況の悪化に比例して、心の平静を失う傾向にあるような気がする。
私は、児ポル法改正や川越支部の話を聞く度に、今まで気にも留めなかったことに対して、
ことさら神経をとがらせるようになった。
例えばコレだ、訴因変更請求書の変更部分。
販売顧客の人数が増え、代金合計額が6万5,300円から11万2,300円に加増された。
そのタカが数万円の差で、有罪無罪、あるいは死刑か無期かが決まるわけではないのだから、
スパイの言葉を借りれば、どーんと構えていれば良いものを、
今の私は、気になって気になって仕方がない。
「弁護士さんは、執行猶予なんて考えるな、とか、厳しいものになる、とか
言ってるんですよ。そうなんですか?」
「でもよ、番長と比べたら、かなり少ないんだぜ。」
場所はいつもの取調室。ウンザリした顔のブチョー。さっきから同じような質問を繰り返す私。
いつもの調書資料作成は、本日に限っていっこうに進んでいなかった。
数年前、同じ取調室で、同じような作業をしていたであろうPGF画像のN氏は、
おそらく平然とこなしていたに違いない。
だが、彼は私のように悩んでいただろうか。
一口に、児ポル法と言っても、児童買春罪、製造罪、販売罪、販売目的所持罪など、様々な罪がある。
今、私が騒いでいるのは、販売罪に抵触する販売金額であった。
「そんな金額より、児童買春の回数の方が、量刑に影響すると思うけどね、オレは。」
取調官はそう言うが、影響しないなら、わざわざ増やしたりはしないじゃないか。
しかも、倍近い増加だ。
「児童買春は、人数じゃなくて回数。同じ相手でもお前みたいに2回会っていたら、2罪。
1罪より2罪の方が重い。量刑もだいたい倍くらい変わるよ。
・・・販売した枚数とか金額が倍になって、判決が倍になったことは、ない。でも・・・」
「でも・・・?」
「裁判は、起訴された事実だけで裁かれるから、6万より11万の方が悪い奴、ってことにはなるよな。」
どっち?
「所持は、100枚越えると、販売目的と判断されるらしいんだよ。
100枚ごとに量刑も重くなるそうだしな。」
「99枚と100枚では大きく違うと・・・?」
「ガサ入って押入れから100枚出てきたら、売るために持っていたんじゃないです、って言っても、
販売目的所持で起訴されるだろうな。実際はもっと持っていても、売るためのものじゃない、
と言い張る奴ばっかりだけどよ。」
実は、私が押収されたDVDは136枚という微妙な枚数だった。
「あれが99枚だったら、個人的鑑賞のためでした、で通用しますかね?」
「いや別に、今から言い張ってもいいんだよ。・・・頑張ってみるか?ん?」
所持していた枚数が136枚だからと、今さら販売について争うのは・・・
それこそ、大した問題ではなさそうに感じた。
今の不安は、販売金額が増えると量刑が重くなるなら、
大谷検事がこの先、どんどんと販売金額を増やしていったら
ヤバイじゃないか、ってことだ。
実際の販売金額は11万2,300円なんてものではないし、
証拠資料から、販売金額をひっぱり出すのは、ごく簡単なことだ。
「販売も10万越えると・・・重くなるのかもしれないな。」
ブチョーの無配慮なつぶやきで、またため息がもれた。
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大男は判決前日に移管されたので、判決前夜の様子がわからなかったが、
ロン毛を見ると、落ち着いている。見ようによっては、あきらめているようにも見えた。
「裁判官、執行猶予付けてくれねぇかな・・・」
冗談のようでもあり、半ば本気のようでもある独り言をつぶやいた。
求刑4年の55番も明日、判決である。
微妙な数字だが・・・本日、荷物整理がなければ、ほぼ実刑確定だ。
どんな気持ちだろうか・・・私はどんな気持ちで判決前夜を迎えるのだろうか・・・
Yesterday Tomorrow Day 101-150
( ̄ー+ ̄) s:th (シスと発音して下さい)