Day 44 経験者は語る
今日は再逮捕満期日で、
不思議なことに、そういう節目には必ずと言っていいほど検察庁に呼ばれていた。(今日も呼ばれた)
昨日の取調べで追起訴と接見禁止解除が話題になり、
「いつ追起訴になるのか、大谷さんに聞いてみろよ。」
ブチョーに言わせると、警察での取調べは予定通り進んでいるが、追起訴が
予想に反して遅いらしい。大谷検事の考えが見えないのだそうだ。
「私としては、追起訴より接見禁止がいつまで続くのかに関心がありますけどね。」
「それなら、ついでにそれも聞いてみろよ。」
初公判前に全部追起訴してもらわないと、公判長引くぞ、と言う。
それは困るな、ということで、
検事調べ開始早々におうかがいをたてた。
「そういうことは君の心配することじゃない、私に任せておけばいいんだ。それより・・・」
雑誌掲載の件「許しがたい」と検察官は言った。
実は数ヶ月前、Wao!マガジンなる新刊男性雑誌の
「一攫千金コミック~ヌレアワッ」なる怪しげな企画の漫画の題材に、
sithを使いたいとの編集部からの取材依頼があり、宣伝になるならと、
sith結成や撮影秘話に関して取材を受け、
それを基にした漫画の載った雑誌が逮捕と前後して発売されていた。
その内容がお気に召さないらしい。
「君は、ブログにもいろいろと書いてるようだが・・・
アレ読んで、真似する奴、出てきたら、どうするんだ?」
どーする、って言われても、ブログ書くことは罪にならないし・・・ね。
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今日は同じ檻の中に、川越組は私しかいなかった。
「日本の裁判制度は見直されるべきだ。」と力強く語る面白そうな男がいたので、
適当に相槌を打ちながら聞いていたが、よくよく聞いてみれば、
土日祭日にタバコが吸えないことにイラ立っているだけのことで、
その主張に裁判制度はまったく関係なかった。
反対側に目をやると、上背のある若い男が老人と刑務所の話をしていた。
若い男はつい最近まで黒羽刑務所に服役していたそうで、
冬は寒いし、仕事は大変だし、規則は厳しいし、イジメはあるし、
「・・・だから、刑務所なんか行かない方がいいよ。」
眉間に皺を寄せ、暗い表情の老人に向かって言った。一層暗くなる老人。
他人事ではなかった。実刑ならば、黒羽刑務所に行く可能性は高い。
(この頃はまだ古い六法にヤラれていた)
最新の黒羽情報を耳にして私も暗くなっていた。
だが、この直後、老人が検事調べで檻を出ていくと、
「・・・なんて話は全部ウソ!」
彼の態度は一変した。
「あのジイさんが、ムショに行きたいとか行ってるから、あんなこと言ったけど、
全然違うよ、ジッサイは。」
「寒くないんですか・・・?」
「そりゃ、寒いことは寒いですよ。シャバと違って何枚も服着れるわけじゃないし、
鼻水たらして歩いてますよ。
でも、スチームあるし・・・要は慣れですよ、慣れ。」
先ほどとは打って変わって明るく話す。
これを信じていいのか・・・?
黒羽には、マーシーもいて、人間として壊れているように見えましたけどね、と彼は言った。
ならば、精神的に大変なところということではないかっ
「そんなことないですよ、楽ですよ。あの人は元ゲーノー人だから苦労しただけですよ」
「私の隣人に、前科8犯の人がいるんですけど、受刑生活は大変だとしか言わないんですけどね・・・」
「えー、そうかなぁ・・・行ったら、刑務所ってこんなんでいいの?って思うと思うよ。
その前科8犯の人だって、(受刑生活が)大変じゃないから、また入ってもいいや、って思うから、
またやるんだよ。キツくてもう2度と入りたくないと感じたら、悪いことしないよ。」
罪名は聞かなかったが、今回は、7,8年入ることになると、
あたかも先進国へ海外出張になった会社員のような、実に気軽な言い方で言った。
確かにその表情、地獄に連行される男のそれではなかった。
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数日後その話を、やはり受刑生活経験者の明石老人にした。
話を聞き終えた老人は、いつものようにすこし間を置き、
「刑務所に入る、ってのはね、世の中から怖いものが1つなくなる、ってことなんだよ。」
すぐには理解できない言い方をした。
「犯罪抑止力にならない、ってことですか?」
老人は、そうだ、と答えた。
人は知らないモノを怖れる。刑務所を知らない者は刑務所を怖れる、が、
刑務所を知った者は怖れなくなる、ということか・・・
マジ、っスか。