Day 35 古い六法の罠
逮捕後、1番最初に受け取った公的な通知は、接見等禁止決定で、実はその通知、簡易裁判所の裁判官の名前で発行されていた。川越支部は小さい裁判所なので、裁判書類は事件の規模に関係なく簡易裁判所から送られていたのだが、当時の私はそれを知らず、さらに留置場備え付けの六法が古かったことも重なり、不本意ながら大きなカン違いをするに至った。
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律は、日本が、児童ポルノに関して厳しい国際的非難にさらされていた中、平成11年、議員立法により成立し、その後、平成16年に法改正が行われ、懲役刑が3年から5年、罰金刑が300万円から500万円等、法定刑が引き上げられていたが、当時の私はそういった経緯をもちろん知らず、留置場備え付けの小汚ったない平成14年版小六法には、しっかりと下記のように記載されていた。
児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
そして、大男から、(この男の裁判は熊谷支部だったので、送られてくる書類は全て地方裁判所からだ)
「なんでアンタ、簡易裁判所から書類が送られてくるの?」
と言われるに至り、これは調べた方がよいかもしれんと、
小汚ったない平成14年版小六法をめくると・・・
裁判所法第33条
(裁判権)
簡易裁判所は、次の事項について第1審の裁判権を有する。
1 訴訟の目的の価額が140万円を超えない請求(行政事件訴訟に係る請求を除く。)
2 罰金以下の刑に当たる罪、選択刑として罰金が定められている罪又は刑法第186条、第252条若しくは第256条の罪に係る訴訟
簡易裁判所は、禁錮以上の刑を科することができない。ただし、刑法第130条の罪若しくはその未遂罪、同法第186条の罪、同法第235条の罪若しくはその未遂罪、同法第252条、第254条若しくは第256条の罪、古物営業法 (昭和24年法律第108号)第31条から第33条までの罪若しくは質屋営業法 (昭和25年法律第158号)第30条から第32条までの罪に係る事件又はこれらの罪と他の罪とにつき刑法第54条第1項の規定によりこれらの罪の刑をもつて処断すべき事件においては、3年以下の懲役を科することができる。
簡易裁判所は、前項の制限を超える刑を科するのを相当と認めるときは、訴訟法の定めるところにより事件を地方裁判所に移さなければならない。
こういう場合、不思議と人間は自分の都合のよい部分しか目に入らないようにできている。
「3年以下の懲役を科することができる」?
↓
3年を越える懲役を科せられない?
↓
懲役3年以下が確定?
↓
執行猶予アリ?
このとき私は、こう考えていた、
簡易裁判所で裁かれるならば執行猶予で出られるかもしれん、と。