逮捕9ヶ月前
編集からDVD製造まで、ほとんどの作業はアジトで完結しますが、発送は外に出ないと行えません。
アジト周辺や生活圏では避けるべき行為ですので、遠距離が望ましいのですが、
早く戻って作業に復帰したいのが本音です。発送は注意深くかつ効率的に行う必要がありました。
そして、発送以上に注意すべきなのが、口座からの犯罪収益引き出しでした。
同業者のほとんどの方々が、ほぼ同じ店舗から発送や口座からの引き出しを行なっていたと、
取調室の雑談で聞きましたが、私には自殺行為としか思えませんでした。
私は発送場所を大きく、都心と他府県に分け、発送量が少ないときはトロリーケースに入れて
鉄道等公共交通機関を利用し都心へ、多いときは車で他府県へ出かけ、安全を担保していました。
これがsith延命に非常に効果があったようです。
取調べも終盤に入った頃、前触れもなく主任が取調室に入ってきて、
ちょっと聞きたいんだが、と2枚の地図を出してきました。
1枚は、山形県内の某インターチェンジ(以下、山形IC)を中心としたGoogleマップのプリントアウト、
もう1枚は、茨城県内の某インターチェンジ(以下、茨城IC)が中心でした。
「行ったこと、あるよな?」
茨城ICは憶えがありました。アンコウ鍋で有名な漁港へ、アンコウ鍋を食べに車で行ったのです。
しかし、山形ICには行った記憶がありません。それを正直に答えると、
「でも、ここのコンビニでカネおろしてるんだぜ。」
主任は地図のとある地点を指差しながら、疑うような視線を私に向けました。
困った私が「山形」をキーワードに記憶を辿ってみると、思いあたることがありました。
遠征(ハメ撮り)です。
「行ったことあるじゃあねえか。」
「でも、山形駅ですよ。」
「どうやって行った?」
「山形新幹線に決まってるじゃないですか。」
遠いんですよ、山形は。しかし、あの山形新幹線つーのは遅っそい電車ですな。などと、
つまらんことまで口ばしっていると、主任だけでなく、ブチョーまでもが、そうだったのか・・・と、
うなずいていました。どうも、捜査本部(というより警察の基本的な考え方として)は、
sith(というより被疑者)は車で移動する、という前提の下で捜査していたようですな。
そのムスメとは山形駅で待ち合わせ、駅からはその子の自家用車で移動しました。
よくよく思い出してみると、ホテルに入る前に、
近所のコンビニで犯罪収益からギャラを引き出しました。
たまたま、そこが、山形ICの近くだったのです。
山形ICも、茨城ICも、私から見てどちらも、交通量の多いインターチェンジではありませんでした。
捜査本部はそこに目をつけたようで、引き出し可能な時間帯に、
両方のインターチェンジを通過した車両をリストアップしたそうです。
「そんなに多くないだろうと思ったんだが・・・100台近くいたよ。それもトラックばっかし。」
sithはトラック運転手ではないか、と考えた時期もあったと、
ブチョーは言っていました。
埼玉県警児ポルチームが、自ら泥沼にハマっていった頃、
永年愛用していたsithの銀行口座がとまりました。
初めて経験する口座凍結でした。
( ̄ー+ ̄) s:th (シスと発音して下さい)